俺はまだ17歳だ。

だから大抵のことは許されると思ってる。

17歳であるというのを武器に、何も分かっていないように装って相手を困らせる。

立場、世間体、仕事、面倒な事が相手にはあるが俺にはない。だから困らせるのだ。


それを俺は許されている。


なぜなら俺はまだ17歳だからだ。




17歳





先生俺と付き合ってみよーよ。
俺先生の事好きだわ。すげぇ好き。
先生は俺の事どう思ってんの?


先生、先生、せんせい、せんせい、



今まで自分が言ってきたことを思いつく限り出してみた。

「笑える」
ぼそりと呟く。
「笑えるな。つか、なんで男相手?銀時お前、いつからホモなんだよ」

高杉が漫画を読みながらそう言い返してきた。

「いや、なんかやりがいがありそうな顔してたから。新人教師だし」

高杉は、まぁホモでもレズでもどっちでもいいけどさぁ、それよりこの漫画つまんねー。
と言って畳に寝っ転がった。

「つーかお前、いつまで俺の部屋にいんの?」
「あーなんか帰るのめんどい。銀時、原チャで乗せてって」
「やだよ。」

チッと高杉は舌打ちをして、いいよな独り暮らしは。と言った。
金持ちのボンボンのくせになに言ってんだか。

「連れ込み放題じゃんお前。そのうち先生もここに出入りすじゃね?」

高杉が憎たらしく笑って立ち上がる。
それはないだろ、と返すとつまんねぇの、と言った。

「そもそも来てどうすんだよ」
「いや、男同士でもヤれるらしいぜ」
「マジか」
「好きなんだろ、先生のことが。」
「うん。」
「男なのに」
「男だからだよ」
「お前の趣味を疑うな」
「でもかわいいよ」

あの人が困ってる顔、見てるの楽しいんだわ、純粋に。
高杉はお前は最低だな、と軽く笑って帰っていった。
好きなの子が困ってるのを見て喜ぶ俺。
なんて小学生並みの恋愛観。かわいいもんじゃねぇか。





「おっす!先生」

翌朝、廊下でぱったり先生に会って俺はいかにもアホのような挨拶をした。

「ハイハイ、おはよう」
それだけ言って、俺の横をサッサと過ぎようとする先生の腕をがしりと掴む。

「いやいやもっとなんかないんすか。てか顔くらい見て挨拶しようよ先生」
「相変わらずうっぜぇな、お前。早く教室行けよ!また遅刻だぞ」
「というか先生、」

俺が真面目な顔をして見せると先生は、ひく、と眉をひそめた。

「俺の告白はどうなったんですか?」

声を潜めて言うと先生は、職員会議あるから、と視線をそらして移動しようとした。
俺はよりがっしり腕を掴みなおす。

「お前告白って、あの軽いふざけたことか?」
「ひどいなオイ。でも俺先生のこと本当に好きだぜ?恋愛的な意味で」
「場所考えろ、ガキ」

先生はますます顔をしかめた。
いいな今の顔。

「いっつもそうやって場所考えろっていうけどさ、学校でしか会えねーんだから仕方ねぇじゃん」
「アホか。」
「アホだよ、俺は」

アホなふりしてんだよ。

「俺は好きな人には好きっていうタイプだからさ」

先生はそこで、じっと真顔で俺の顔を見た。
お?っと気をとられていると力がゆるくなっていた俺の右手から離れた。

「あ、」
「じゃ、俺行くから」
「放課後また進路指導室に行くからー」

先生は無視だった。
まぁ、いいけどね。







なんで男?と俺も初めは思った。
けど、そんなことはだんだんどうでもよくなってきた。
好きなものは好きだ。
先生の嫌そうな顔を見るとそそられた。もっと見たいと思った。
あれだよ、好きな子の笑顔は見たいのと似たような感じ。
ただそれが、俺の場合笑顔じゃなかっただけってそれだけの話だ。
たいしたことじゃない。





その日の夜、俺は17歳らしい問題にゆるくぶちあたった。
家にある借りものAVも見飽きたしどうしようかと思ったのだ。

「どーすっかなぁ…」

なんなら先生をオカズにやってみようか、とふと軽い好奇心が湧いた。
これで抜けたらどうするよ?俺マジでホモなのかな、
とかぼんやり思いながら俺の好きな先生の顔を想像した。
困ったような、嫌そうな、焦ったような、
そんな顔をした先生が男に無理矢理犯される。
その男は別に俺じゃなくたってよかった。

というか俺じゃない方がよかった。



事後、俺は自分の想像力に呆れた。

「…マジかよ」

ひくわー俺…と呟きながら手についたものを見る。
でも、と俺は思う。


「(でもこれ位許されるわけで。)」



だって俺は実際にはあんたに触らないし、
無理矢理犯したりもしない。
ただ俺はあんたの困った顔見てそれで満足してる。だったらこれ位いいだろ。
このことあんたに言ったら今度こそひかれて嫌われるな。まぁその顔も見たい気がするけど。





俺には権利がある。


なんでって、わざと軽く好きって言って、あんたが真剣に返事を出さなくてもいいようにしてる。
俺は先生をオカズにしていいし、先生に好きだ好きだと言って困らせてもいい。
その代わり俺は先生には触らないし、先生に一言で好きだと言うことはない。


「(若気の至りだ)」


実は誰かに言われるよりも、自分が一番よくわかっている。
俺はまだ17歳で、たぶんこれからまだまだいろんな恋愛をするんだろう。
これはその中の一瞬で、とても薄っぺらい一つにすぎないのだ。
なら許される。


そもそもこんな気持ちをもっているのは俺が17歳だからで。
どうせすぐに好きな人が変わるよ17歳だから、と言い聞かせて
俺はまだ大丈夫だと自分で自分を甘やかす。



俺は先生が好きだ。





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