*原作設定













そよ姫様が行方不明になった。その犯人はあのチャイナ娘だった。
1日中探し回り、日が傾きかけたころ、やっと見つけた。
今は、原田が運転する車の中で俺とそよ姫が後ろに並んで座っている。

「困りますよ、勝手に外に出られては」

そう言うと、すみませんと申し訳なさそうに、そしてはっきりと謝られた。
まだ幼いのにその態度からは育ちの良さがよく分かる。

「でも、友達が初めてできて嬉しいんです」

そう言うと上品に、にこりと笑った。

「とりあえず、これからあなたをお送りするころには日が暮れてしまう。
 今日はともかく、明日はじぃとやらに叱られますよ」

そう軽く言うと、そよ姫の顔は先程の上品な笑みは一瞬で吹き飛び、
口元に両手をそえて、あら、そうだわ、と今更になってショックを受けていた。

「みんな、きっとものすごく心配してますね」

悲しげに目をふせてしんみりとそよ姫は言った。
なんだかとても悪い事をしてしまったみたいだ。
どうも居心地が悪くなった。

「いや、そよ姫様がご無事なことはもう連絡しましたので、心配いりませんよ」
「でも、」
「きっとじぃも喜んでますよ。」

少し慌てて言うと、そうですか、と穏やかな声で言った。
正直、幼い少女の扱いは分からない。



そよ姫は窓の外の景色を寂しげに見ていた。
一時の自由から戻され、まだ知らない街から見慣れた景色に帰る時は誰だって寂しい。

「・・・明日から、また同じ景色を見る生活に逆戻りです」

その寂しさを理解できても、自分はその生活を変えさせる事は当然不可能で彼女の悩みは解決できない。
どうしたもんかといろいろ考えてみたがいい言葉は浮かばない。


「明日の話はやめましょう」


俺にはこれくらいが精一杯だ。

「・・・はぁ」
「それよりも着くまでにあのチャイナ娘と何処へ行って何をしたか教えて下さい」


そよ姫は目を何度もまばたきさせてこちらを見た後、焦りながらしどろもどろし始めた。
俺は、あぁ、と独りで理解する。
これではまるで取り調べだ。自分が言うものだから余計シャレにならない。
バックミラー越しの原田と目があった。
うるせぇな、分かってるよ、と内心で原田に答える。

「えぇと、その、なるべく楽しげに・・・聞かせてください」

なんと言えればいいのか分からず、かなり不格好な言葉になってしまった。
そよ姫を見ると、くすくす笑っていた。


「そうですね。明日の話は止めて、今日楽しかった事を話します」

明るくそう言うと、こほんとかわいらしく咳ばらいをして今日あった事を話し始めた。



















明日の話はしない

( 素 敵 だ っ た 今 日 の 話 を )
















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