*原作設定
ふと街で見かけた男は、またでかくなっていた。
男は俺に気付かず、団子をくわえふらりふらりと歩いている。
声はかけなかった。
男は前のように俺見て、前のような声で俺の名前を呼ぶことはないだろう。
もし、声をかけたら男はどんな顔をするだろうか。
予想して、怖いな、と思う。
何が怖いかぐらいとっくの前から知ってる。
俺が怖いのは、変わっただろう男の顔だ。
人込みの中でも位置を確認できるほど目立つ銀髪。
男はふらふらと危なっかしく歩いていた。
しっかり自分の前の道を歩くことは、この男にもう一生ないだろうと俺は勝手に予想する。
俺の少し前にいる男の背は少し伸びた。
俺の背は伸びない。
変わる男、
変わらない自分。
この違いが、男に声をかけるなと警告していた。
「(んなことわかってらぁ、)」
もとより声をかける気なんてない。
この男と話をしたら自分までふらふらと歩いてしまいそうだ。
それだけは絶対に嫌だ。
またこの男の甘さに酔わされるのだけは御免だった。
それはお互いのもってるモノが壊れる事に等しい。
君の甘さに酔う
( け れ ど そ れ は 昔 の 事 )