紅桜編の後日談。
銀さんにとって僕達は何なのだろう。
家族
ピンとこない。
家族と言えるほど銀さんは、僕達に全てを曝け出さない。
過去のこと、大切な人のことはもちろん、
苦しいこと、
悲しかったこと、
つらかったこと。
でもきっと、そんな事が銀さんにあったと僕達はわかってる。
(魘されている所をもう三回も見たんだから)
わかってるから、辛かった。
僕達は過去の事だって、全て曝け出しているというのに。
銀さんが家族を夢見ているのもわかっている。
非道で、ずるい。
可哀相な人。
そして僕達はまだ子供。
銀さんの苦しいことや辛い事は、僕達じゃまだ受けとって救って、上に投げてやる事はできない。
だから子供なんて嫌だ。
僕達は早く大人になりたい。
銀さんが僕達に寄りかかってくれるぐらいの大人になりたい。
それはいったい何年先だろう。
その頃僕達は一緒にいるだろうか。
僕達は思う。
いつか、離れる時が必ず来るだろう。
その時言い出すのはきっと、彼。
口には出さないけれどきっと僕達のためを思って銀さんは言うだろう。
もしそんな時が来たら、僕達はどうするだろう。
たぶん必死で引き留める。
いやだ、いやだ、とかぶりを振って。
まるで幼児のように駄々をこねて。
大人になったらそんな事はしないだろうか。
ちょっと無理して笑みをつくり、去っていく彼の背中を見送るんだろうか。
僕達には考えられない。
そんな辛い事ができるなんて。
大人になりたい。
銀さんにもっと頼って欲しい。本当の家族のようになりたい。
でも、子供でもいたい。
銀さんを笑って見送るなんてしたくない。
去っていく銀さんの背中を必死で走って追い掛けて、
走りながら、
泣きながら、
彼を罵って、
それでも一緒にいたいんだよ
と叫ぶ。
大人になりたい、
なりたくない。
矛盾してる。
二つの願いがぶつかりあって、結局僕達はどうする事もできず動けない。
子供でいる事に専念できず、銀さんに全部話してくれと、わがままを言うこともできなければ、
大人になって、行動には僕達の為にという想いがあるんだと悟り、全てを許し、これが僕達の為で銀さんの為なんだと理解する事もできない。
なにもできない無力さに落胆している僕達の様子を見て銀さんは、
焦るなよ、
と一言いった。
じゃあ、自然に成長するまで待っててくれますか?
と聞いた。
銀さんは笑って、当然だろ、なんて言った。
僕達はそう言う銀さんを見てなんだか悲しくて涙が出てきた。
じゃあ、もし待っててくれなかったら針千本。
そうやって言うと、望む所だ、なんて強気な事を言った。
また涙ができた。
嬉しいのか悲しいのか今度は分からない。
分からないまま、ただ泣いている僕達を銀さんは抱きしめた。
「・・・悪かったよ、」
泣くのを噛み締めたような声で銀さんは言った。
そうだよ、それが聞きたかった。
銀さんの声に僕達は、大声で泣いた。
銀さんもちょっぴり泣いてたと思う。
大声で泣きながら僕と神楽ちゃんはまだ子供でいようと心に決めた。
それまでは、
どうかそこにいて
( お 願 い 、 も う 少 し だ け )