いつも頭のどっかでお前との終わりがちゃんとあると、なくちゃいけないと俺は思ってる。
特にヤッてる時。うっとおしいくらい考えちゃうんだよ、俺は。


俺には見える。








二人でこたつに入ってぬくぬくと暖まりながらコンビニで買ってきたアイスを食ってると、
テレビのニュースで女子アナが、『今年もあと一ヶ月をきりました』なんて言った。


「もうすぐ年越しか。一年ってはえーな」
「そらお前ら学生は、毎日を忙しく過ごしてるからな」

そう俺が返すと高杉はテレビから目線を離してこっちを見た。

「なに?アイス交換したいの?」
「ちげーよ、俺ぁ抹茶しか食わねー」
「じゃあなに、」
「お前と会ってから一年、はえーなぁって、」

いいことじゃん、と俺。 なんで、と高杉。

「ん、なんとなく」
「んだよそれ」

俺といて楽しいからはえーんだろ一年が。
そう言うと高杉はフン、と言ってコタツに入ったまま寝転んだ。


俺の恋人は、かわいい子です。


「おい、コタツで寝るなよ」
「寝たら銀八が起こしてくれる」
「やだよ、おまえ寝起き機嫌わるいもん」

やんややんやとぬるい言い合いをしてふと、自然と静かになった時に高杉がまた呟いた。


「一年って、はえーのな」
「そりゃはやいよ。だってお前、まだ17だもん」
「17、ね」


きっと今、高杉と俺は同じことを思ってると思う。


一年経った。あと一年なのかまだ一年なのか、


何がって 俺たちが。



「来年はどうなってんだか」

ふ、と笑って高杉は言った。

「さぁな、」


俺が切るかもしれないし、お前が切るかもしれない。
あれ?別れる前提か、俺。でもまぁ、こいつのこと考えたらその方がいいんだろう。


「年末は、また子達と鐘つきに行ってくる。元旦は万斉のライブ」

いいよなぁ若者は、としみじみ思えてきた。
次から次へと出かける予定、まだどうとでもなる未来。
俺なんてこれ以上変わることなんてあんのかね。

「へぇー、アクティブだね」
「俺だって行きたくねーよ。でもまた子がうるせーから。銀八は?」
「俺かぁー…じゃあ、ここでコタツに入ってガキ使見ながら、酒飲んでる」
「ふーん」

いや、ふーんて。特に何ともない返しだな。
高杉に申し訳ないとかいうものはたぶん、ない。

「高杉ー」
「なに?」
「風呂入るか」
「入れば」
「いや、2人で」

高杉が少し体を起こして見る。はた、と目が合う。驚いた顔。
今まで一緒に風呂入ったことなかったからね。

「テメーだけで入ってろよ」
「んだよ、つまんね」
「何がつまんねーんだ。変態教師」

いや、でも男はみんなスケベじゃん。

「あーあ、高杉と姫初めしよーと思ってたのに」
「いきなりなんだよ」
「ったく、先約があるとはな」
「…お前その日家にいるんだろ」
「いるけど?」

別にヤれねーからって代わりに誰かとなんてねーよ、いねーし金もねーし。
と言うと高杉は一瞬、安堵した表情を見せた。
お前はそういう所がいちいちかわいいよね。

「あー…今年も終わるな、高杉」
「お互いそればっかだな今日」


「あと何回お前とエッチできんのかなぁ」



あと一年なのか、まだ一年なのか。



高杉はまたぱたりと寝転んだから表情は分からなかった。
コタツの中で高杉の足が俺の足を蹴った。
なにすんの、と言ったら、むくりと起き上がった。髪がくしゃくしゃだ。

高杉は座っている俺にまたがって乗る。俺の方を見て。そんでもって高杉からキスをした。

「どしたの」
「べつに」


俺の恋人は、たまに強引になる子です。



もう一回キスをして、それから今度は俺が高杉の耳と首にキスをした。

「なぁ高杉、まだ俺たち風呂入ってないんだけど」
「いいよ。つか、はいんなよ」

そう言って高杉は腕をまわして俺の首すじに顔をつけた。

「え、なに。俺がしてたのにもうお前のターン?」

「ちがう」


じゃあ何してんの?

嗅いでんの、お前の。

俺の?

お前のにおいを。



高杉は俺のにおいを嗅いでる間何もしなかったし、俺もできなかった。

「どんなにおいよ?俺」
「タバコと、あとこの部屋のにおい」
「そらそーだ」

高杉は顔をあげないまま話した。



『俺たちあと何回エッチできんのかな』


お前と永遠だなんて俺は思ってねーよ。おまえだって実際そうだろ?




「なぁ、ずっと家にいるんだろ。ずっと、」
「あぁ…」
「家はここだろ?」
「さぁ?もし俺が結婚したら変わるかもね」
「結婚できんのかよ、」
「わかんねーよ?」
「いいよ、しなくて」
「バカヤロー。お前、簡単に言ってくれるなよ」



おまえはずっとここにいればいい、と高杉は言った。
ひどい話じゃん。俺一人ここで外から帰ってくるお前を待つなんて。



「お前はフラフラフラしてっから、家に帰らねー日が多くなるんじゃねーの」
「ふっ、ちげーねー」
「バカ杉」
「うん、バカだ」

うん、じゃねーよ。とんでもねぇガキだ。

「高杉、もういい?」
「うん」



俺の恋人は、正直エロい子です。



イッた顔とかすげーかわいいし、いちいち緊張する所とかもツボだし、


それが俺の、



「高杉、」
「なに」
「好きだわ」
「うん」
「すげー好き」
「うん」
「高杉、」
「なんだよ」



高杉は俺のにおいを嗅いだけど、俺は高杉のにおいを嗅がなかった。



「あと何回、お前とエッチできるかな」
「言われなくても、おまえが望むまでしてやるよ」




でも確かに俺には、そう遠くない未来にお前が俺から離れる姿が確かに見える。



高杉、もうちょっとだけ俺のものでいてよ。

























現実を見て、夢をみる



( 君 の 目 が 覚 め る ま で は )
















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