沖田病気設定。OKな方のみどうぞ。


















「あれ?あんた、旦那の所の」
「・・・なにアルか?」

山崎はたくさんの二つの大きなスーパーの袋を持っていた。

「あんたも買い物?」
「まあね、そんなとこヨ。地味男は何買ったアルか?」
「・・・俺は、ほらお酒と煙草ばっかだよ。 あ、沖田隊長から頼まれた林檎も」
「林檎?」










沖田は縁側から庭に出て、迷い込んできた黒猫を触ったり、ただ見ていたりしていた。

「おい、総悟」
「なんですかぃ土方さん」
「なんですかじゃねぇよ、寝てなくていいのか」

そう言って、土方も縁側に座った。

「土方さんこそ仕事、しなくていいんですかぃ」
「・・・休憩中だ」

土方は黒猫を撫でる沖田の白い腕を見ながら言った。



「(また痩せたな)」



ぼんやりと思いながら煙草を吸う。細くて、白い煙りがまっすぐ空に向かっていった。




「その煙り、線香みたいでさぁ」

沖田はいつの間にか立ち上がっていた。
土方は内心ぎくりとした。まったく同じ事を考えていたからだ。

「俺に立てる線香が、ヤニ臭いのは勘弁ですぜ」

そう言うと土方の方を向いてにやりと笑った。




「(楽しんでやがる)」



沖田の顔を見て、土方は確信する。
返答に困る様を見たいのだろう。
誰がのってやるものか。


「お供え物は焼きそばパンでいいか?」

にやりと笑って沖田を見た。
沖田もまたその解答に満足したように、にやりとした。

「あと、マガジンじゃなくてジャンプもですよ、土方さん」










「いやっ!まずいですって!」
「なんでアルか!こちとら、てめーんとこのトッシー副長を助けるのに協力してやったんだぞ。コラァ!!」

罵声を山崎にあびせながら神楽は山崎ごとひっぱり頓所の中にどんどん入っていく。

「痛ててて!!とりあえず俺を離してくださいよ!!」

神楽は、ピタッと止まると、山崎から手を離した。

「ふう、ったく。人使い、荒すぎですよ」



すると今度は、立ち上がった山崎の襟元を思いっきり鷲掴みにする。

「あいつの部屋、教えてヨ」
「あいつ?」
「サド野郎のことアル」
「それは、ダメです」


山崎は急に真剣な顔をしてきっぱりと言った。












「あーあ、暇すぎまさぁ」

沖田は布団の中から大声を出して言った。
黒猫はまだ庭でうろうろしている。

「山崎のヤロー、たかが林檎でどんだけ時間かかってんだ」

沖田は左腕を天井に向かって伸ばした。
白くて細い腕が目に入る。

「よく、こんな腕で刀持ってたよ」





「そっちは左手だから、刀なんて持ってないアル」


沖田は目だけ動かし、声の主を見た。

「馬鹿、両手使うんだよ」

そう言うと腕を下げた。
神楽の手には包丁と林檎一個があった。



「今日は喧嘩できねぇぜ」
「喧嘩しに来たわけじゃねーヨ」


神楽は、布団の横に座ると黙って林檎の皮を剥いた。


「なんで枕の近くに座らないんですかぃ?」
「顔、見たくないからアル」

神楽が皮を剥きながらそう言うと、沖田は小さく笑った。


「じゃあ、なんで来たんでぃ」
「見舞いアル」


山崎にはそういって中に入れてもらった。
神楽はもくもくと林檎の皮を剥き続ける。



「お前、死ぬってどう思う?」
「怖いアル」
「そんだけですかぃ」
「死ぬのは怖い事以外の何にものでもないヨ」


神楽が林檎の皮を剥き終わり、食べやすい大きさに切り終わる間、お互い何もしゃべらなかった。
沖田は庭を見て、神楽は林檎を見ていた。
全てやり終わると、神楽は黙って立つと林檎ののった皿を枕の横に置いた。

「猫がいなくなった変わりに蝉が鳴き始めましたぜ」
「近くにいるアルな」


神楽はその場に靴がなかったので、縁側から庭に裸足で出た。
木の幹に止まっている蝉を捕まえると、部屋に戻ってきた。

「蝉取りですかぃ、一人で」
「うるさかったからヨ」





蝉は神楽の手の中で、ジジ・・・と低い音を絶ていた。






「その方がよっぽどうるせいや」



沖田は蝉の声を聞きながら目を閉じて言った。



















カナカナが鳴いた













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