昨夜、ある宿で沖田は神楽を抱いた。
沖田が目をあけると青々しく爽やかな空が窓から見えた。
しばらく寝転んだまま空を見て、そういえばと神楽を探した。
まだ寝ていた。横で白く、薄い背中を沖田に向けて寝息をたてている。
おい、と神楽の肩に触れたと同時に柔らかい事に少し躊躇する。
「・・・何ヨ、」
「いい加減起きろってんだ」
「お前だって、ついさっき起きたくせに」
なんで知ってんだ、と沖田が言うと神楽はくすくすと笑った。
「お前、そろそろ帰らねぇと」
「帰らなきゃいけないのはお前の方だろ」
「まあ、確かに」
沖田は自分の着物を掴むと立ち上がった。
「うわっ。ここで立つなヨ!汚ぇもんが視界に入るアル!!」
神楽はそう言ってとっさに手で顔を覆った。
失礼だな、おい、と沖田は着ながら反論した。
「・・・旦那は心配してないんですかい?」
帯を細い腰に巻き付けながら沖田が問う。
「・・・銀ちゃんは、昨日の夜飲みにいったきりだと思うヨ」
だからしてないネと神楽は顔を手で覆ったまま言った。
「・・・そうですか」
沖田は着終わると神楽の前に座った。
「昨日、泣いてましたよね?」
「お前がいきなり襲うからアル」
「馬鹿ですか?俺が制服で行けねぇ宿に行く時点で気付いてたんだろうが。」
神楽はそうネ、と呟いた。
「でもあれは拒む為に言ったんじゃないヨ」
本当のことだもん。
神楽はそう言ってまた寝転んだ。
神楽の視界には自分の桃色の髪がちらちら入った。
ぼんやりと銀時の後姿が見えた気がした。
が、すぐ消えた。当然幻覚だった。
神楽は目を閉じて呟いた。
「心配なんかしてないヨ」
沖田は横目で神楽を見て、手で顔にそっと触れ、髪をはらい自分の顔を近付け真近で神楽を見た。
「するはずないネ」
「あれで旦那は過保護ですよ」
「保護、なんてしてほしくないアル」
神楽は沖田の手を掴むと自分の頬にあてた。
「銀ちゃんはお前にも過保護ネ」
神楽の淡い青い目が沖田を映す。
神楽は口元を緩めて微笑むと目を閉じた。
沖田もまた神楽と向かいあって寝転ぶと今度は神楽の白い手首をつかみ自分の頬にあてた。
そして、目を閉じた。
「俺も保護なんてしてほしくないですよ」
お互いが触れた手の温度は暖かいとも言えず冷えてるとも言えなかったが心地よかった。
No one's perfect.