目を開けると見慣れた天井が目に入った。

ふぅ、と軽く息を吐いてむくりと体を起こす。
それと同時に、ずずっ・・・と布団が擦れて音を出した。

「おい銀時、いい加減に起きたらどうだ」

俺が動いた拍子に布団がずれたのも構わず、銀時は寝息をたてている。
やれやれ、と誰にあてるでもなく声に出す。
銀時をこちらによせ、鼻をつまみ口を手で塞いだ。




「ぶはぁ…!!」

「おはよう銀時」
「あ、うんおはよう。 じゃねーよタコ。何してくれんだ」
「タコじゃない桂だ」
「もうそのやりとり飽きた」

飽きた飽きたと文句をつけるなら名前で呼べ、
と言ってやりたかったが銀時はもうその話をする気がなさそうだったので黙った。

「ヅラ。俺、服どこやったっけ?」

なんで俺がお前のふざけた服の居場所を知ってるんだ。
俺はお前の母親ではない。

「ヅラ、聞いてんの?」
「お前がほったらかしにして邪魔くさかったから畳んで置いておいた」
「んでどこに?」

ここでその質問に答えたら本当に俺は母親だなと思った。
自分から否定しといて結局認めるなんて事はしたくないので口を閉ざす。

「ヅラ?おーい、聞いてんのか」
「お前も少しは自分で探したらどうだ。それに俺はヅラじゃない桂だ」
「それはもういいって」
「じゃあ名前で呼べ」

俺がそう言うと銀時は、面倒さそうな顔をして頭をかいた。

「あーしろ、こーしろってお前は母ちゃんか」
「お前は母ちゃんとチョメチョメするのか」

なまじ自分でも感じていた事を言われ、ムキになって反論する。

「するわけねーだろ」

銀時はそう言うと自分で服を見つけ、身に着けた。

「それに母ちゃんは新八だけで充分だよ」

銀時は迷惑そうに言ったが、その言葉の中にある銀時の本当の気持ちが手に取るように分かった。



「ツンデレもいいとこだな」
「あ?なにが」

ふと、自分の中に新八君を羨やむ気持ちが腹の底にあるのを感じた。
自分はあれほど拒絶していたのにおかしな話だ、と思う。

よくよく考えれば、銀時の中の新八君の位置が羨ましいのではなく、
銀時にああゆうふうに言われる新八君が羨ましいのだと気づく。
なにせヤツが俺に向ける言葉の中には新八君に向けるようなものはない。
俺達の会話はいつも、銀時が俺の話をどうでもよさそうに聞いているか、銀時のくだらん話を聞いてるかしかない。
甘い言葉もなければ、互いを気にかける会話もない。例えあっても何かのついでだ。

「おい銀時」
「なに」
「新八君とチョメチョメしてるのか?」
「してるわけねーだろっ!」

その怒鳴り声とともに銀時の飛び蹴りをくらった。

まあ、俺達の会話なんてこんなものだ。
















日常を愛す
















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