朝、カーテンからもれた強烈な白い日差しで目がさめた。
この部屋はなんとなーくだが見覚えがある。
だたっ広い寝室。ついでにでけーベッド。
こんな高価な家具と部屋を取り揃えている俺の知り合いなんて、一人しかいない。

「おい。起きろ、辰馬」

呼んだが起きない。うーとか、あーとか言っている。
ちっ、と舌打ちをして服を探そうと体を起こした。
昨日、ちゃんと掛けたっけ?
辺りを見渡すがそこらへんに置いてある様子はなかった。

ふと気づくと、なにやら長い腕が腰に纏わりついている。

「・・・離せ、黒もじゃ」
「わしがちゃんと掛けたぜよ」

俺に纏わりついまま寝転がっている辰馬が、眠そうに欠伸混じり声で言った。
あそこのクローゼットの中じゃ、と指を指す。
あそーですか、お前も気をきかせることあんのね、と言うと、
おんしは1度も気をきかせたことはないがの、と返ってきた。
あるよ馬鹿、内心だけで反論。

「いいから早く起きろよ」
「無理。眠い、つらい」

辛いって、まるでお前が受けたみてーじゃねぇか。
やりたい放題やった分際でなんだこいつ。
今日は火曜、平日で仕事もあるんだよ。

「じゃあ起きなくてもいいから離せ」
「いやじゃ」
「我が儘言うな」
「おんしもたまには、わしの言うこと聞いたらどうじゃ」

そう言うと腕を引っ張られ、ぼすんと音をたてて頭が枕に落ちた。
腕を背中に回している。どうやら離す気はないらしい。

「暑苦しいぞ、おい」
「おんしはまっこと可愛くないのぉ」
「悪かったな」
「まったくじゃ」
「じゃあ、やんな」
「それは、いやじゃ」
「我が儘言うな」
「おんしは本当に素直じゃないのう」
「充分素直だよ」
「止めて困るのはおんしじゃ」

辰馬はそう言うと腕を離して俺の顔を正面から見た。

別に困らねぇだろ。
付き合ってるわけでもあるまいし。

言葉の準備はでてきているが、なかなか面と向かって言えないのだから腹が立つ。
あぁ、俺ってホントこいつに甘い。





いっとくけど俺も辰馬もゲイじゃなかった。
バイでもなかった。男とヤったのはお互いが初めてだった。
初めてやった時の理由も、酔った勢いみたいな感じで碌なことじゃなかった、と思う。
けど別に俺は辰馬を責めたりはしなかった。(とりあえず一発殴ったが)

「お前ってほんと節操ねぇよな」
「なかったからこそ今があるんじゃ。」
「あーそうですか」

節操なかった事に感謝しろ、と言ってきたので誰がするかと返した。
むしろあった方が助かるなぁ、坂本君。今日も遅刻せず仕事にいけるしよ、

そう言って辰馬の頭をがしっとつかむ。
辰馬はそうかそうかと笑っていた。
こいつ本当に分かってんのか、と内心で怒りを押さえながら俺もそうだそうだと作り笑いで返した。
辰馬はなお笑ったまま、俺の腰を離すつもりはなく、
俺は仕事だ仕事だと言っているくせに辰馬をどかそうとはしなかった。


まぁ、俺達の関係なんてこんな感じだろ。















日常を愛す
















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