※坂田と土方の思考が交互にくるようになってます。




成績優秀に運動神経抜群にイケメン。なのに彼女なし。女子からの人気もそりゃあ高い。
そんな男を惚れさせる相手はどんなものかと思うだろう。やっぱり色白の巨乳の可愛系女子、それともスポーツ大好きの何気に巨乳の元気系女子、または図書委員とか入ってるよく見たら巨乳の大人しい系女子だろうか。

「やっぱ巨乳図書委員か」
「そうか、お前はそういうAVが好きなんだな」

体育の時間、クソ暑っつい中サッカーしてるイケメンをコート外であぐらをかいて、審判兼観察兼考察していた。するとそのイケメン男は何時の間にか俺の背後に立っている。

「あ、お疲れ様でーす」
「お疲れ様でーすじゃねぇよ真面目にやれ。つーか昼間っからそんなことばっかか」
「いやいやAVの話じゃなくて、イケメンはどんな女子がタイプなのかな〜って」
「へぇ、誰」

そういけしゃあしゃあと言ってコートの外においた自分のタオルを手にとり少しグランドの砂をはらって顔の汗を拭くイケメン男。そう、土方。
だから嫌いなのだ。世の中のイケメンという奴は。

「これだから無意識イケメンは腹立つんだよ。天パになれ馬鹿野郎」






『どんな女子がタイプなのかな〜って』

相変わらず嫌なことを聞く男だ。なにがって、わざわざそこを女に変えてきた所が。
坂田銀時と俺の関係はたいして仲良くないただのクラスメイト。
ただ他のクラスメイトと違うのは坂田と何回かセックスしたことがあったこと。
違うことは本当にそれだけで、別にお互い好きとかそういった感情はなく、そして当然そんな感情がないだけにそのことが俺の中で大きな意味をもったわけじゃない。







あの時の俺ってばどうかしていた。
今となってはそれしか言いようがない。
シチュエーションのせいかそれともその前日にみたAVのせいか。
ただのクラスメイトで特別仲もよくない男となんて。

確か最後の授業だった水泳の後のことだ。

なんとなくその日はたるくてその水泳の授業から帰りのショートまでクーラーのきいた保健室で爆睡して、放課後暑い教室に戻ったら土方がいた。
今日は部活がないのか制服姿で忘れ物を探してるっぽくて、そんで俺に気づいて俺を見た。その土方にまたどーした事に色気を感じたわけだ。


あり得ないことが一つ起きた後は何度同じことを繰り返してもその「あり得ないこと」は一つにしかならない。ならいいんじゃないか? そんなわけの分からない理論を理由に開き直った俺は最終的に一回の過ちどころかもう五本指では足りないくらいヤった。男にとか俺の性欲どんだけだよと改めて思った。
でも土方は全部拒まなかった。そりゃ初めの一回はかなりアレだったけど。
普段涼しい顔してクールに過ごしている奴だったが、どうやら土方も俺と同じ位の性欲はあったらしい。

いやらしい奴だよ。俺もお前も。







あの日の最後の授業は水泳だった。
そしてあの時の放課後の教室の暑さと床の埃っぽさとセミのうるさを俺は二度と忘れることはないだろう。
あの時はとにかく訳が分からなかった。何度抵抗しながら問いただしても坂田は何も言わず、坂田は俺の口を坂田の手でふさいだ。悔しい事に坂田は俺より握力が上だったし、器用だった。
「悪い土方。なんか、興味?」

いつも名前をまともに呼ばないから俺の名前を知らないんだと思っていたし、別にこんな奴に覚えて貰わなくてもいいと思っていた。
でも俺はあの日、屈辱的な事に坂田の手でイった。


昨日セックスまがいな事をしたからと言って俺と坂田銀時の関係は特に変わることはなかった。「手を出してごめん」と謝って来ることもなく本当に坂田という男は平気な顔をしていて、さすがにその反応には面食らった。
運悪く、始めて男とした次の日の学校は席替えがあり、その席替えで後ろの席になったのは坂田だった。
縦一列の人数が多い為前後の隙間はとても狭いものだった。
席替え終わりのショートで担任からの配布物であるプリントを後ろにまわす時、振り向かずに後ろにいる坂田自らが手を伸ばしてとれといわんばかりに雑に回す。
その手を見て、心臓辺りがドキリと嫌な反応を起こした。

「多串君おまえ、もっと愛想よくできねーの?手伸ばさなきゃとれねーとか、」
「よくそこまで平気になれるな」

振り返らず声を潜めてそう言う。
坂田がこちらに手を伸ばすと同時に身を前に乗り出し、耳元で囁いた。

「だって挿れたわけじゃないから」

それに良かったんだろ?俺の手のしごき具合。

そうぼそりと呟き、坂田はまたいつものような適当な態度でひょいと俺からプリントを取った。

明らかに常識人から外れたいるその答えに俺は絶句する。
そういう問題じゃない。
そういう問題じゃないが先程の坂田の低い静かな声音が耳にまとわりついて離れない。

「俺の声に弱いね多串君」

後ろで、わざと深い意味を持たせずサラリと言った坂田を俺は振り返って睨む。

「俺は多串じゃねぇ」
「分かってるよ」

坂田は薄く笑う。

「土方十四郎だろ?顔はいいけど愛想最悪で、」

坂田の目が開いて、口が止まった。

「愛想最悪の男だぞ」

俺が皮肉を込めて代弁する。

「やっぱり何にも分かってねぇよお前」

男が男に手を出して、今さらそれを認める事ができないなんてとんだ腰抜け野郎だ。

「じゃあ、教えてよ多串君」

坂田は一人で呟くみたいにそう言った。










俺の勘だが、最近土方についに彼氏ができた。おそらく同じ部活の山崎だろう。

彼女ではなく彼氏。セフレではなく彼氏。彼氏ができるとセフレという存在は自然消滅するという流れがあるらしい。俺の鋭い勘が動き始めてからもう土方とセックスする事はパッタリなくなった。
ショックというより意外。いや、だって彼氏ができてしまうという事はマジでホモって事だからね。銀さんびっくりだよ。全部俺の勘なんだが甘くみるな、俺の勘は外れた試しがない。










「なぁ、」

息が上がった坂田の低く、少しねだるような声が耳元で甘く響いた。

俺は顔を腕で隠しながら、いちいち聞くなと返した。

「だって、挿れるの始めてだからさ」
始めてだからこそあえて自然にやれよ。アホかこいつ。
坂田が前もってそんな事言うからこちらもそれなりに緊張と不安が走った。

「ちょっとお前、力抜いてくんねーとキツ…」
「しっ知らねぇよ、てめぇが、挿れたいんだろ。っ…だったらもうてめぇが全部なんとかしろよ、アホ」

苦し紛れにそう言うと坂田は、あーじゃあリラックスさせてあげましょうかと面倒くさそうに言って、がぶり、とキスしてきた。
「(うわ、食われる)」
そう思った。
どんどん坂田のものが入ってきて、圧迫感と謎の快感が同時にじわじわと蝕んだ。
苦しいのに気持ちがいい、気持ちがいいのに苦しい。

俺はいつからこんな変態になった。

「…うっわ、食われそう。っていうかこの絵図は食われてる?」

坂田がそう静かに言う。
いや、逆だろ。この雑食動物、と言おうとしたが、今話すと声が上ずりそうで俺は黙った。










別に俺は山崎と土方のいちゃいちゃな日々はあまり興味がないし、もう土方とできなくなったことで山崎を特に恨めしく思ってもいないが、どうにも腑に落ちないのが一つ。

「土方さん、お疲れ様です」
「暑すぎだろ。なんでこんな炎天下の中体育でサッカーなんだよ」
「ですよねー俺は室内でバドミントンがやりたかったですよ」
「お前だけだろ」

山崎が土方といつかセックスする事になる時山崎のちんこが、俺によって丁寧に丁寧に指でほぐされた土方の中にあっという間にスムーズに入ってしまうと思うと何だか複雑である。…いや、さすがにそこまでスムーズではないか。
しかし山崎のちんこは知らない。
始めて土方の中に指を挿れた時のあの締めつけ具合とかあとその時の熱。
はじめてとその後はそんな変わらないって?いやいや全然違いますからね。

セックスをする時、土方を食ってるのは俺なのだが、俺の息子がずぶりと奥に入った瞬間、俺がこれから食われるんじゃないかと思った。そう思うと少し背筋がゾクリとして、この男への支配欲がぐぐっと沸いてきた。
いつも涼しい顔して受け答えしてる普段の土方がこんな苦しそうな、我慢してるみたいな、とにかく一生懸命な顔をするんだと思って俺はただそんな土方の顔を見ていた。

その時もっとこいつのいろんな顔が見てみたいと思った事は、あの時の俺だけの秘密だ。


「うーん いいような悪いような」
「また巨乳の図書委員か?」
「違うって」
「じゃあ何の話だよ」

俺の息子を食らう土方とサッカー後での健全な爽やかイケメンを発揮する土方のギャップに不覚にも勃ってきた。
ふざけるなよ土方。いや、いっそふざけてくれ。ふざけてまたお前とセックスがしたい。
なんでしたいの、とかそういう小難しい話はなしにしよう。俺たちは若い。若いならそんな細かい事気にしてられない。それに俺は物事をはっきり決めるのは苦手な方なんだ。


「だからお前の話だよ」


お前もそうだろ?おあいこだ。





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