ノック&トライ、トライ&エラーを読んでからどうぞ。









女の扱い方は大体分かる。
何が好きで何が嫌いだとか、こうゆう時にどうして欲しいのとか、なんて言ってほしいのかとか。

なんだって分かる。自分の好きなモノだから。





酒と女とセックスと、






「おい、あれお前の女じゃん」

あ?と一度雑誌から顔を上げて高杉の指さす方を見ると間違いなく自分の彼女だった。

「なんで知ってんの?」
「別にー。お前から告ったんだって?」
「おう」

また雑誌に目を落とす。
礒山さやかのグラビアをぺらぺらとめくる。


「あいつ、土方のこと好きだと思ってた」
「んー、実際そうだったけど」
「よくまぁ、そんな女に告白したな」


ふぅ、とため息をついて雑誌を閉じる。


「よく見なさい高杉君。彼女の胸を」
「Dか?いやひょっとすると・・・」


うーんと首を捻っている高杉の耳もとでささやく。


「E」
「マジかよ」
「さらに柔乳」
「うっわぁ・・・ヤってみてぇ」
「な?そう思うだろ」
「お前の悪い癖は一生直りそうにねぇな」



ちなみに俺の悪い癖とは、相手をころころ変えるとかそんなごくごく当たり前なことではなく、
付き合う女の俺の中での条件である。簡単に一つしかない。



セックスして気持ちがいい女かどうか。



沢山いそうで沢山いない。
なんでかって?前に付き合った女よりもいいかどうかがネックなわけですよ。


「その判断をこの肥えた目が決めるわけだよ」
「まさかEもあったとは・・・」


しかし、よく付き合えたな、と高杉。
まぁ、俺も土方が好きなんだろうと思っていたからオッケーを貰った時は意外だった。

が、

なぜオッケーだったのか、今更ながら分かってきた。
俺と土方がよくつるむのを知っていたからオッケーしたのだ。



「複雑なんだよ」
「アホか」








****



「あ、土方さんじゃない?あれ」



彼女が指さす方を見るとベンチに座って煙草をふかしている土方が確かにいた。


「(目敏いな)」


別に俺的には、あ、ホントだぁーって終りにしてもいいコトなのだが、
彼女的には当然そんなコトもなく。


「紹介してよ、仲良いんでしょ」
「ああ、うん」


断る理由もなかったかので初めて土方に彼女を紹介した。



オトコって分かりやすいよねーとよく言われるが、俺からしたらオンナこそみえみえだったりする。
更にいえばオトコよりも、かなりやらしいやり方を知ってたりする。


土方はじっと彼女を見ていた。


「・・・で、これからデートか」
「デートっていうか、これから銀ちゃんの家にいくんです」
「余計なこと言わなくていいって」


と言って軽く頭をはたく。
土方はただただ彼女を見て、最後にはもう相当、嫌そうな顔をしていた。


「(失礼なやつ、)」


こうゆう金髪の派手めな女は嫌いなのかもしれない。
いや、どうでもいいけど。


その後二人で家に帰る。
そのあと夕飯作ってテレビ見ながら食って風呂に入ったらもうほら、
いつのまにやら夜でやるコトは一つしかない。



「なんか最近毎日してる気がするなぁ」
「実際毎日してるからね」
「銀ちゃん貪欲だよねセックスに関して」


他に興味あんまりがないから珍しいとか思っちゃった、と彼女は言った。


「そりゃあ、男の子だし」


そうです。俺は健全な男なんです。
だが大変残念なことに俺は昔(といっても一年前とか)よくゲイに間違えられた。
なんでかは俺もまったく分からない。
ゲイに間違えられただけでも嫌なのに、高校生の時「君そっちでしょ」と、
見ず知らずの40代のやけにでかいおっさんに肩を掴まれて、無理矢理トイレに連れて行かれたことがある。


これ、俺のトラウマ。

で、その後高杉が言う悪い癖が発祥した。


「俺さぁ昔よくゲイに間違えられたんだよ」
「えぇ?銀ちゃんが?」
「うん」
「・・・まぁ、怪しい雰囲気は出てるけどね」
「え、 嘘」
「ホントホント」


不思議すぎる。
こんなに女が好きなのに。








****



その日の大学の帰り、駅のスタバで彼女と土方が一緒にいるのをちらりと見かけた。


「(あーあー。ついにお誘いまでしちゃったよ)」


これはそろそろ潮時か?とか思って少し離れて見ていたら土方が飲み物を手に取り、それをなんと彼女にかけた。
予想を遥かに超える展開に俺は絶句する。


彼女は泣いていた。


俺は足早にその場を去った。
あまり見ていたくなかった。




『お前、ヤれればなんでもいいんだろ』


高杉に高校三年の時に言われたことだった。

『まさか』
『よく言うぜ、ヤることしか頭にねぇくせに』
『だから、そんなことねぇって』


『無理無理、オンナはお前にとって性欲処理の機械でしかねぇんだよ』



自宅の玄関のドアを開けて面倒さいから電気もつけずにベッドに倒れる。
確かに、あの時高杉の言った通りかもしれない。


女は好き。


でもその好きが、誰か特定の人に定められてることなど自分にはないのだ。
だって、自分が彼女の全部を愛していた時なんてない。

腰が好き、くびれが好き、目が好き、足が好き。

全部こう。
・・・てか全部体じゃん。


「あーーなんかもうダメ」


でも当然ヤるの好きだし。


結局、俺の好きなモノって何だ?






「邪魔するぞーって暗っ!」
「誰だー勝手に入ってきたの。大家さんー?家賃ならまだ待って」
「てめぇで確認しやがれ」

パチ、と電気のスイッチがつく。
俺はベッドから顔を上げた。

「んだ高杉か・・・」
「鍵開いてたから勝手に入ったぞ」
「何用?」


がさがさと机の上に缶ビール二本を置く。


「いや、急に飲みたくなって」
「俺今、自分について悩んでたんすけど」
「アホか」


ぷしゅっとフタを開けてビールを飲む高杉。
ほらよ、とビールを渡す。


「お前の好きなモノ」



俺もぷしゅとフタを開けてビールを飲む。

「あーうまい。うますぎる。」
「そらよかった」



「なぁ高杉、今なら俺お前でもたつかもしれない」


「ふっ、馬鹿だわ馬鹿すぎるわお前」





俺の好きなもの、

やっぱり酒と女とセックスと、あとたまに来るこうゆう男。
































inserted by FC2 system