「くぉらクソひーじかたぁー」
暑さで張りのある声も出なかった。
デスクワーク中のはずなのに机に突っ伏している土方を注意してやった。
人がこんなかんかん照りん中見回り行って帰ってきたらこのザマたぁ、
沖田のまだ日光で沸いた頭では怒る気力も怒鳴る気合いもでなかった。
エアコンが、ガーガー音をたてている。もう古いもんなぁこれ。
「土方さん、」
土方さんは顔をあげない。報告書と書かれた紙の上で土方さんは寝ていた。
「(最近、この人こればっかだなぁ、)」
呆れる、けど可哀相だとも思う。
あんたもたまには稽古したいだろうに、
はめはずして酒だって飲みたいだろうに、
女だって・・・
「ん、総悟か?」
少し驚いた。
土方さんは、なんだか小言を言いながら頭をあげた。
「なにドア開けっぱなしにして立ってんだよ、」
閉めろ閉めろ。
あ、はい。
で、お前何しにきたの。
あの、土方さん今すげぇ顔してますよ。
うるせぇな寝不足なんだよ。
寝不足っていうか欲求不満そうでさぁ。
土方さんの顔がますます不機嫌になる。
不機嫌になって、分かってんじゃねぇか、と笑った。
目は笑ってない。
「今なら俺、男でも抱ける勢いだぞ」
「マジでか土方さん。ちょっと山崎に言ってきてやらなきゃ」
「や、冗談だっつの」
そんくらいって意味だよ、と土方さん。
「いいよなぁ、お前は。なんたって女に興味ねーんだから」
そんくらいってどんくらいですか?
本気で男とヤっちまう気なんてないんでしょう。
俺は女に興味はないですよ。
けどもし、今あんたに興味がある、なんて言ったらあんたどんな顔しますか?
目を丸くしてびっくりすんだろうなぁ、そんでちょっと後退る。(別になにもしねぇのに)
それで、
それで?
「あー総悟、俺ちょっと寝るから邪魔すんなよ」
そう言って土方さんは布団もひかずにごろんと体を右に向けてた。
俺はそっと気配を消して傍にいく。
「土方さん、」
背中に話しかけた。
背中は答えない。
どうしよう、俺は困惑している。
今、背中に触れて見たい。
骨のでっぱった感じとか、わりとさわりごこちのいい肌とか。
シャツごしにでもいいから触ってやろうか。
手を伸ばして見る。
ふと、伸ばした時に自分の太いとはいえないけれどごつごつした男の手を確認した。
じわじわと蝉がうるさい。
俺は固まって伸ばした手を力なく落として寝ている土方さんをぼーと眺めた。
はやく起きろ。
あ、でもやっぱりまだ寝てていい。
いや、永遠に寝ろクソ土方。
口にするなら最後の言葉。
でも、思うのならば他二つ。
労いの言葉なんて、俺らしくなさすぎるけど言われたら、悪い気はしないんだろうか。
「お疲れさんです、土方さん」
土方さんが今起きてたなら飛び起きたにちがいない。よかった寝ていた。
俺はすごくほっとした。
欲求不満